マツド・サイエンス研究所

軌道エレベーター

最近、軌道エレベーターが話題だ。先月も、お台場で会議があったらしく、テレビなどでも派手に報道されていた。ちょっとバブルっぽくて、うさん臭い感じがしているのは私だけだろうか?

軌道エレベーターって、理論的には全く科学的に正しい。でも、技術的に相当厳しくって、実現はかなり未来のことになると思う。実現は相当未来だってことを皆が納得して話題が盛り上がっているだけなら、良いんだけど・・・

「実現が相当未来だって言えば、おまえの小惑星開拓の方が余程未来のことだろう」って言われそうだ。でも、私は小惑星開拓の方が先じゃないかって思っているんだ。いや本当。軌道エレベーターの建築って、それほど技術的に現在とのギャップがあるんだよ。

それから、軌道エレベーターについて気になるのは、「エレベーターで昇って、何処行くの?」の点。

「上から見ると景色が良い」なんて、能天気な理由だけで、こんな巨大建造物が作れるわけない。

エレベーターと言えども、一種の乗り物。乗り物なら、何処かへ行く目的地があるはずだ。昇って帰ってくるだけじゃあつまらない。

で、軌道エレベーターに乗って、何処かへ行けないかって考えたのがイラストだ。

ざっと計算すると、絵のように静止軌道である高度3万6千キロを超え、高度5万7千キロまで昇る。ここで、エレベーターのロープから、手を離すと、アラ不思議、勝手に火星まで連れて行ってくれる。鉄人室伏ならぬハンマー投げの要領だ。

同じように、高度12万キロなら木星、高度14万キロなら土星だ。外側の惑星だけじゃ無く、内惑星にも行ける。高度10万キロなら水星、高度5万4千キロだ。私の好きな小惑星帯なら高度11万キロだ。

今のNASAの構想だと、軌道エレベーターは、高度10万キロの高さまで伸して、そこに重りを置くらしいが、土星まで行くこと考えて、15万キロ位の長さにした方が良いなあ。

外側とか内側の惑星に行けるのは、エレベーターのロープから離れるタイミングを変えること。左のイラストのようにタイミングを変えると、外側にも内側にも行ける。

ただ、軌道エレベーターからは、目的地の惑星まで行く「ホーマン軌道」には入れるけど、目的の惑星に着いたら、そのままだと通り過ぎて、逆に戻ってきちゃう。目的の惑星に止るためには、止るためのロケットと燃料が別途必要になる。

意外と、軌道エレベーターは、火星とか小惑星とか他の星に行く役に立ちそうだ。静止軌道より高いところに昇った時の遠心力が気になったが、一番大きな土星へ行く場合の14万キロの高度でも、0.08G しかかからない。これなら十分だね。

こう書くと、とても難しい計算をしたように思われるかも知れないが、表計算ソフトがあれば、15分くらいで作れる程度だ。必要となる情報も、地球や太陽の質量とか軌道半径など理科年表程度で、むしろネット上を探索した方が楽に見つかる。私の計算など、とっくに同じような事を、だれかが発表しているに違いないが、論文サーベイするより、計算した方が早いので、自分で計算してしまった。

なお、立体角の計算が面倒なので、面外制御の部分は考慮していない。実際は、もう少し余計に制御量が必要になるだろう。

とは言え、ハンマー投げ方式で、火星やら小惑星に行くのも悪くは無い。軌道エレベーターを批判しようと計算を始めたのだが、擁護するような結果になってしまった。

まあ、いいか。

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