マツド・サイエンス研究所

自分の頭で考えたアイデアを言おう

若者が、自分の頭で考えたアイデアを人前で言うのは大変なんだろうなあ。実は若者に限らないけど。

間違えなく「何の役に立つのか」「本当に可能なのか」とか言われる事を恐れるだろう、それ以前に「笑われるんじゃないか」と思ってしまうだろうし。

本当のところ「アイデア」を思い付くのが先で、「実現可能性」の検討が二番目、三番目に「何の役に立つ」かが来る。二番目と三番目の順番が逆になることもあるが、「アイデア」だけの段階があるのは間違いない。

だから、最初は「アイデア」だけで、「実現可能性」も「役に立つ」も無い段階で人に話すことになる。これを自分一人の胸の内にしまっていると消えてしまう事が多すぎる。人に話して初めてアイデアが固まり、実現化への道を進み始める事が多い。だから、自分の頭で考えたアイデアを人前で言うのは本当に必要なんだ。

「アイデア」を聞く側の姿勢も大事。話を受け取る方としては、「笑う」なんて論外で、親身になって一緒に考える姿勢が必要なんだろう。実際、実現可能で役に立つアイデアなんて2割程度。だから、8割無駄になっても構わないから、残りを救う覚悟でやらんといかん。

そう言う過程を踏まないで、「自分のアイデアは正しい」と言い続けられるのは余程の変人か自信過剰な人間だけだ。

正直、私自身も若い(20代の)ころは「自分がアイデアを考え出せる人間」だと思っていなかった。自信が持てるようになったのは、最初に自分の頭で考えたアイデアが、曲がりなりにも実現可能性を示せた時だ。

私の場合、アイデアが思い付いてから、実現可能性を示せるまで10年近くかかった。

アイデアの発端は月。よく知られているけど、月は年数センチずつ地球から離れている。つまり高度上昇の軌道制御と同じ。自然ができるんなら、人間ができないわけが無い。月が高度を上げることができるなら、同じ原理で人工の宇宙船とか衛星だってできるだろうって単純に考えた。

月の高度上昇は知っていても、その原理を知っている人は少ないだろう。高度上昇することは位置エネルギーが増えるはずだが、そのエネルギーは何処から来るの? 運動量は?

まあ、そう言った問題疑問を一つ一つ片付けていって、それを人工的に模倣するシステムを構築していったわけ。もちろん、本当に作ったのではなく、理論的に組み立てただけだけど。

10年近くかかって、満足できるシステム構想が構築できたので、論文にまとめ始めた。しかし、人のマネではない理論を、人に説明するのは難しい。全て自分の言葉で説明しなきゃいけないからね。それまでの論文が如何に他人が作り上げた構想・構築を真似しているだけだって、良く判った。

その頃、周りの人は、私の事を半分おかしくなったんじゃないかと思い始めたらしい。なんたって月の動きを模倣する推進システムだからね。ところが、幸か不幸か海外で全く同じ主旨の論文が見つかった。それも、凄く権威のある人の論文だ。僅か数年前に出たもの。少なくとも私がおかしくなったのではないことだけは、当時の上司に認めてもらえて、それまで居た製造(?)部門から、今居る研究部門に配置替えになったわけ。

私自身は先を越されて悔しかったが、それでも自分のアイデアと、それを実現するためのシステム構築の考え方が正しいと判り、自信を得た。「月の様な推進システム」の実現は諦めたけど、その後、新しく野心的なアイデアを実現する事に挑戦し続けている。

まあ、これ以上、私の成功体験を語っても、本題から外れるだけだ。

要は、自分の頭で考えたアイデアを人に言うには自信がなきゃいけない。自信を得るためには成功体験が必要だ。成功するためには、人前で話すことが必須・・に近い。

これじゃ、ニワトリとタマゴじゃないけど、堂々巡りだ。

せめて、人に話すところから始めようか。

まねではなく、本当に自分の頭から出たアイデアを話そう。

他の人のアイデアじゃなく、自分の頭から出たアイデアなら、少なくとも私は、笑わないから。

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