マツド・サイエンス研究所

3Dプリンタで作りたいもの

Twitterでも呟いたが、チタンなどの金属対応の3Dプリンターがあるらしい。チタンの微細な粒子を溶融することで3D形状を作ると言うものだ。鍛造並みの強度があるとのふれこみだが、本当に鍛造並みかは判らないが、それなりに強度があるなら、実用的なものも作れそうだ。

3Dプリンタが使えるなら、従来の加工法だと作れなかったものを作りたい。そう思ったのが、『ハイパーハニカム』と私が勝手に呼んでいる三次元に拡張したハニカム構造だ。

『ハイパーハニカム』は、ずいぶん昔の

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でも紹介したボロノイ・セルと言う菱形十二面体を重ねあわせた構造だ。一般的なハニカム構造は蜂の巣のように六角形が二次元的に広がっているが、ハイパーハニカムは六角形が三次元に三方向ならぬ四方向に広がった構造だ(広がる方向が4つなのは、方向が直行しておらず、正四面体の4つの面と並行な方向に広がっていると思ってくだされ)

で、ハイパーハニカムを画像にしたのが、冒頭の赤い画像。OpenGLを使っているんだが、いまいち、判りにくいね。2枚目はボロノイ・セルを一つだけ取り出したもの。各面に穴が開いているのは、3Dプリンタの場合、加工後、あまった金属粒子を取り除く必要があるからだ。

このハイパーハニカム構造の特徴は次の通り。

・ボロノイ・セルは球の最密充填と同じ配置

・頂点はダイヤモンド結晶の炭素と同じ配置

なんか、これを聞くと構造的には強そうと思えるね。

もう一つ考えたのが青い画像。これは、最密充填と同じにジョイント部を置いてトラス構造を作ったもの。これを勝手に『ハイパートラス』と呼ぼう。次の画像がジョイント部を4つ組み合わせて正四面体にした部分を取り出したもの。よく見てもらうと判るかも知れないが、ジョイント部はボロノイ・セルになっている。

ハイパートラスの特徴は言うまでもなく、

・頂点は球の最密充填と同じ配置

である。

ハイパーハニカム、ハイパートラスともに従来工法では作りにくい。だから、3Dプリンタで作りたいのだ(厳密に言うと、ハイパートラスは従来工法でも制作できる。ハイパーハニカムも無理すれば従来工法で作れないことはないが、とっても面倒)

さて、ハイパーハニカムとハイパートラスの最大の違いは、強度を面でとっているか、ビームの圧縮・張力だけで取っているかの違いだ。

赤いハイパーハニカムの場合、各頂点をボールジョイントにしてビームで結合する形式にすると簡単に潰れてしまう。格納展開と言う使い方も考えられるが、構造体として使うには、面が強度を持つというパネル構造にする必要がある。

一方、青いハイパートラスは各ビームの圧縮・張力だけで構造強度を保てる。形状的には少し変わっているが、実は従来の立方格子に斜めのビームを入れた構造とトポロジー的には等価である。

もう一つの違いは、赤いハイパーハニカムは、どの構造メンバーもあらゆる方向に一直線上に並んでいないと言うことだ。これに対し、青いハイパートラスは6方向(正四面体の各辺方向)にジョイントとビームが一直線上に並ぶ。

仮に、極めて弾性率が高く圧縮力に対して縮まない理想的な構造材料でハイパートラスを作った場合。ジョイントとビームが一直線上に並んだ両端の各1点に力を加えた場合、その一直線に並んだ構造に力が集中し、他の構造体に力が分散することはない。

現実には、全く縮まない材質など存在しないので、縮んだ事により力は分散される。が、これは裏を返せば、力の分散は材料の弾性に依存すると言うことだ。

これに対し、ハイパーハニカムは弾性によらず力が分散する。

この力の分散は、どちらが良いか良く判らない。

とにかく、今まで作りたくても作れなかったハイパーハニカムのような構造を作ってみて、特性を調べてみたいものである。

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