マツド・サイエンス研究所

ファイナルオーディオデザインのHeaven IVを買った

先週末、秋葉原に行って、イヤホンを買った。

今までは、SONY MDR-EX310SL を使っていた。これはこれで、実売5000円以下のイヤホンとしては申し分ない性能なのだが、自作のオーディオプレーヤーが熟成してきたため、完全に力不足になったのだ。

そこで、ひとクラス(ふたクラス?)上の1万〜2万円台のイヤホンを買うことにした。まずは、ヨドバシカメラで片っ端から試聴する。私の作ったオーディオプレーヤーは、どうもマルチドライブのバランスドアーマチュア(BA)型とは相性が悪いのか、高音と低音の繋ぎ目で音が乱れる。また、SHUREのBAは、シングルドライブであっても相性が悪いようで、早々にSHUREが候補から外れる。

最後まで候補に残ったのは、ゼンハイザーのIE60とファイナルオーディオデザインのHeaven IV。

IE60は、今まで使っていたEX310SLと同じくダイナミック型。低音が得意なダイナミック型だけあって低音が効くし、それだけでなく、中音以上もシャキッとしている。

対して、Heaven IVは、本来低音が苦手なシングルドライブのBAと言う形式だが、その割には低音が効く。ただし、低音が効くと言っても、あくまでもBAシングルの割には、と言う断り書きが付いていての話であり、聞き比べると、IE60どころかEX310SLよりも低音が効かない。その代わり、中音から高音が綺麗に出る。

価格はIE60の方が3000円高い。

考えに考えた挙句、Heaven IVを買うことにした。理由は、IE60は今まで使っていたEX310SLと同じダイナミック型であり、方向性として、その延長線上にあり、今までと変化が少ない。

一方、Heaven IVはBAと言う全く違う形式で、音の性質もダイナミック型とは全く違った方向性を持っている。また、私の自作オーディオプレーヤーは、今まで使っていたイヤホンに合わせたためか、ダイナミック型イヤホンは上手く鳴らすことができるが、BA型イヤホンが苦手な傾向にあり、それを直すためにも、BA型を購入することにした。

実は、Heaven IVも試聴の段階で、高音領域に割れたような音が入る傾向にあった。帰宅後、ヘッドホンアンプの出力部に22Ωの抵抗を入れたところ、見違えるように改善した。インピーダンスのアンマッチングにより、イヤホンからアンプへ変な反射があり、アンプで異常な帰還がかかっていた可能性が高い。さらに超高音領域が出すぎているように思えるので、LPFの特性を変更した。これも効果があった。

まだ、エージングが十分に済んでいないが、中高音域の伸びは流石はBAだ。ハイレゾ音源で聞き比べると、今までEX310SLで聞いていてサビの女性ボーカルはソロだと思っていたのが、Heaven IVで聞くと前半ソロの後そっとコーラスが加わるのが判った。低音はEX310SLには及ばないものの満足できないほどではない。

ところで、私がファイナルオーディオデザインのイヤホンを買ったと言うと、首をかしげる人も居るかも知れない。ファイナルオーディオデザインと言う日本のマイナーメーカーの存在自体知らない人が大多数だろうが、存在を知っている人なら私のキャラと合わないと思うに違いない。

実は、最初、私自身ファイナルオーディオデザインの存在自体知らなった。何の予備知識もないまま、ヨドバシカメラで試聴した時に、ゼンハイザーのIE80/IE60とファイナルオーディオデザインのHeaven IVがベストと思った。まあ、この時点ではゼンハイザーやSHUREも知らなかった。つまり、何の先入観もない状態で聞き比べたわけだ。

帰宅後、ファイナルオーディオデザインをネットで調べて驚いた。真空管アンプや異様な材質を使った変なデザインのイヤホンなどを作っているマニア向けのマイナーメーカーだった。私はオカルト的なオーディオマニアが嫌いで、スピーカーケーブル等に材質に凝るような事には疑問視している。つまり、ファイナルオーディオデザインは、私の嫌っているオカルト的なオーディオマニアを対象としているメーカーのようなのだ。実際、ファイナルオーディオデザインのホームページの製品ラインナップを見ても、私が欲しいと思うものは一つもなかった、Heaven IVを除いては。

ファイナルオーディオデザインのWeb上での調査後、再び、ヨドバシカメラでHeaven IVの試聴をしてみた。こんな変なメーカーのイヤホンを良いと思うなど、耳が曇っているじゃないかと疑ったからだ。しかし、何度となく、試聴を繰り返しても結論は同じ。Heaven IVは、この価格領域ではIE60と並んで、音が良い。先入観のない状態で、耳だけで選んだのだから、純粋に音は一番良いんだろう。逆に予備知識のある状態で試聴したら、ファイナルオーディオデザインの製品は選ばなかったのかも知れない。

Heaven IVは非常に素直な設計で、ファイナルオーディオデザインの製品の中では特異な存在であり、ファイナルオーディオデザインの製品とは思えないほどだ。同じHeavenシリーズでも Heaven Vは、ファイナルオーディオデザインの製品らしく材質が真鍮と耳を疑うような素材を使っている。Heaven Vも試聴してみたが、明らかに音が劣化している。Heaven IVの高剛性ステンレス構体を剛性の弱い真鍮に変えているから当たり前だ。これで、Heaven IVよりも1万円も高いのだから、正気を疑いたくなる。冗談ではなく、本当に、Heaven IVはファイナルオーディオデザインの製品ではないと思っている。他メーカーのOEMなのではないだろうか?

とにかく、Heaven IVは、異端のファイナルオーディオデザインの中では、異端の存在だ。異端の異端だから、逆に中央に戻ってきているのだが・・

結局、考えに考えた挙句、自分の耳を信じる事にした。確かに変なメーカーの製品かも知れないが、Heaven IVは確かに偏見なく良い音に聞こえたのだから。

もう一つ、読んでいる方々が首をかしげることがあるかも知れない。私の事を「良い音で音楽が聞きたいのか、それとも良い音を出したいだけなのか?」と言う疑問だ。既に述べたようにHeaven IV購入後、アンプ出力のインピーダンスの調整を行ったり、LPFの特性を変更している。しかし、ゼンハイザーのIE60ならば、そんな調整をしなくても、最初から良い音が出ている。音楽を楽しむだけなら、余計な苦労をせずに、ゼンハイザーのIE60を買ったほうが早い。

確かに私は音楽を聴くより、BA型と言う新しいタイプのイヤホンで良い音を出す事に夢中になって、本来の音楽を楽しむことが疎かになっている。そもそも、ハイレゾ音源で聞きたい曲もないのに、ハイレゾに対応するようなイヤホンを買う事自体、目的と手段を混同した間違いだ。まあ、これがマニアがマニアたる所以であり、ファイナルオーディオデザインの事を云々言える立場ではない。

と言うわけで、マニア的な視点から言うと、当面の目標は、シングルBAのHeaven IVで良い音を出し切ること、そして、その次は、SHUREを代表とするマルチドライブBA型イヤホンで良い音が出るように挑戦することだ。また、その先にもゼンハイザーのHD800のようなインピーダンスの高いヘッドホンのドライブなどなど、課題は山積みである。

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