マツド・サイエンス研究所

コミケ報告

8月12日(月)にコミケにサークル参加した。ちょっと遅くなったが、その報告だ。実は私は今までコミケに行ったことが無かった。サークルのみならず一般客としてもだ。

今回は、初めてのコミケなのだが、いきなりサークル参加して、自分の作ったものを売ることになった。コミケで売ると言っても、漫画ではない。電子工作だ。

コミケで販売したのは、基本的には2種。一つ目は「ハイレゾ高音質携帯オーディオプレーヤ」、もう一つは「液晶付きデータロガー」だ。それぞれ、「部品を全く載せていない生基板」と「主にハンダ付けが難しい表面実装部品だけ付けた半完成品」の2パターンずつ、計4種を売った。

コミケは本来、同人漫画を売るところなのだが、オリジナルの電子工作も売ると知ったのは、去年の夏だ。コミケで、オリジナルのヘッドホン・アンプの基板を売っていると知って、それなら当時私が作っていたオーディオプレーヤも売れるんじゃないかと思った。

昨年末のコミケはサークル参加申請が間に合わず、参加していない。が、この時に一般客として行った水城さん(当コミケ・サークルの代表)が、オーディオプレーヤを持参した。コミケ会場に居たヘッドホン・アンプを扱っているサークルの人に音を聞いてもらったところ、「そんなに音は良くない」との反応を受けた。

それで奮起して、二人でオーディオプレーヤを改良し、今回のコミケに向け音質を大幅に良くした。

データロガーの方は、今年の4月に作り始めたばかりのもの。これは私自身が電子工作をするときに、ロジアナやオシロスコープよりも遅くて良いから、数時間から数十時間連続でデータを記録するロガーが欲しいと思い作ったものだ。通常、ロジアナやオシロスコープのサンプリング周波数は遅くても数十MHzだ。それに対して、私のデータロガーのサンプリング周波数は10kHzしかない。しかし、単三電池2本で数十時間のデータをmicroSDに記録し続けることができる。

オーディオプレーヤもデータロガーも、主に私が回路設計やプログラミングを行い、水城さんがプリント基板のパターンを作っている。プリント基板は、無料のCADでパターンを作り、それをインターネットで送れば、中国の工場から10枚2300円で送ってくれるというモノ。これ、15年前だったら、4〜50万円かかって当たり前だった。できた基板に主に水城さんがハンダ付けし、私が回路テストを行う・・と言うのをオーディオプレーヤの場合は3回、データロガーの場合は2回繰り返した。

さて、コミケ当日、8時に会場入りし、準備をして、10時の開場を待った。周りは、ほとんどが電子工作関係。おなじような種類のサークルを集めているらしい。

10時になると一般客が流れるように入ってくる。意外と整然としていて静か。今回のコミケは3日間で59万人が来場するという空前の人出だったらしいが、目立った混乱はない。

開場と当時に入ってくる大量の客は、お目当てのサークルへと急ぐ。人気サークルのグッズは早く行かないと売り切れるからだ。このため、開場から30分は全く客が来なかった。10時30分になり、人気のグッズが売り切れた頃になると、客がやってくるようになった。

まずは、展示品のオーディオプレーヤを試聴してもらう。

「音がイイね」と言う反応が、ほとんどだった。昨年末のコミケの反応とはエラい違い。改良したかいがあったというものだ。すかさず

「96kHz 24bitのハイレゾ音源対応の完全自作オーディオプレーヤです。」と言うと

「え、ハイレゾのオーディオプレーヤが自作できるんだ」と好感触。

全く誰にも見向きもされない可能性すらあったのだが、意外と受け入れられた。

こうして、12時頃まで、それなりに売れて、この分だと売り切れるかな・・と甘い期待も。しかし、午後になってから売れ方が鈍化。多少は売れたけど、売り切れって事は無かった。

と訳で、多少は売れたが、儲かってはいない。結果は残念ながら赤字だった。

内訳は以下の通り。

 売上

  オーディオプレーヤ半完成品 9000 x 3 (準備したのは8枚)

  オーディオプレーヤ生基板  1000 x 19 (準備したのは20枚)

  データロガー半完成品   5000 x 5 (準備したのは10枚)

  データロガー生基板    1000 x 4 (準備したのは20枚)

  合計 75,000円

 支出

  オーディオプレーヤ半完成品 4500 x 10 (うち展示品2枚)

  オーディオプレーヤ生基板  230 x 20

  データロガー半完成品   2500 x 10

  データロガー生基板    230 x 20

  コミケ参加費       5000円

  印刷(ちらしと説明書のコピー)

   6x40x10

   7x20x10

   40x10

  合計 88,400円

となり、差し引き13,400円の赤字と言うわけだ。あと、オーディオプレーヤ半完成品とデータロガー半完成品が1枚ずつ売れれば、とんとんだったんだけどねえ。それとも半完成品を少なくしておけば良かったか。

さて、なんで私がコミケに参加して、わざわざ決算報告をブログで公開しているかと言うと、「オリジナルの作品を、損しないで開発し世に出すことができるか」と言うことを試したかったからだ。

例えば、オーディオプレーヤは、ウォークマンや iPod のようなものだ。だが、大手のSONYもAPPLEも、まだハイレゾ音源対応の携帯オーディオプレーヤを作っていない現在に完全自作で作ってしまおうと言うモノだ。まあ、大手じゃなくてマイナーメーカーなら、ハイレゾ対応のオーディオプレーヤもあるようだが、とても高価なので、完全自作の方が安いので存在意味はそれなりにある。

今から30年前に携帯オーディオプレーヤつまりウォークマンを開発しようものなら、開発だけで何百万だか何千万だかの金額が必要だっただろう。生産のための設備投資は億を軽く超えるんじゃないかな? この投資を取り返すためには、何万個とか何十万個売れないとダメだった。もし、売れなきゃ開発費と生産設備への投資の分だけ赤字になる。とてもじゃないが、個人でリスクを負える金額じゃない。

ところが、昨今では、既に書いたようにプリント基板が15年前の100分の1くらいのコストで作れるようになった。電子部品も小型軽量で高性能なものが秋葉原やネット通販で買える。プログラミングも全てフリーのツールで可能だ。これらは電子工作だけではない。今回は使わなかったが、話題の3Dプリンタを使えば、CADで作ったモデルを実際に格安で作ってくれる業者もある。

この結果、オーディオプレーヤは正確には計算していないが、4万円くらいで開発できた。

今回は赤字だったが、例えば、オーディオプレーヤとデータロガーの半完成品を、完成品にして3枚ずつ程度にしていれば、赤字解消になるどころか、4万円ほどの黒字になる計算になる。つまりオーディオプレーヤの開発費も得ることができたわけだ。

要は何が言いたいかと言えば、「30年前は、オリジナルの電子機器を開発するには、数万〜数十万の人に売れる必要があり、そうでなければ、数億円を超えるリスクを負う」だったのが、「現在では、30人程度の人に売れれば損しない。仮に丸損しても数万円」って事になる。

要は、技術開発の「損益分岐点は、販売数が数万だったのが、数十個になった」と言うことと「開発に伴うリスクが極端に減った」と言う事だ。

何万と言う人に受け入れられなければ、数億円と言うリスクと伴うのであれば、個人がオリジナルなものを作るのは極めて難しい。

しかし、数十人に受け入れられれば損そせず、万一まるでダメでも数万円の損で済むなら、個人が自由な発想でオリジナルなものを作るのも容易になるだろう。

正直に言うと、イノベーションと言う側面で見た場合、オーディオプレーヤは半人前だ。イノベーションとは技術的な進歩だけじゃなくて、新しい価値観の創造もある。オーディオプレーヤは、言ってしまえば、ウォークマンやiPodの価値観を借りただけだ。それをハイレゾ対応に改良しただけに過ぎない。

しかし、データロガーは、価値観も含めて私のオリジナルである。この世になく、私自身が欲しかったものを具現化して、コミケと言う場所で世に問うたものである。でも、売上は、オーディオプレーヤの半分。なかなか、価値観の創造は難しい。

まあ、ろくな事前の宣伝なしで、半完成品と生基板あわせて9枚も売れたのだから、ある意味成功だったのだが。

さて、ここまででも、十分に長文になってしまった。

まだまだ、コミケの情報で書くことは残っているのだが、また、別の機会にするかなあ。

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