野田真紀のお気楽・極楽 英国便り

その2 何故日本では、横型洗濯機が流行らなかったか? 26th June 1998


何故日本では、横型洗濯機が流行らなかったか?

 渡英して1ヶ月半、賃貸の家に引っ越すまで、キッチン付きのホテル暮らしが続いた。ここで、一番困るのが洗濯。ホテルにコインランドリーがある訳でもなく、毎日お風呂に入る我が家から出る、家族4人分の洗濯物は、冬であるから余計に、かさ張る衣類が多く、とんでもない量になる。それでも下着類などは、洗面台で手洗いをしていた。

 でも、こんなことをしていても埒があかない。主人は週末の休みの度、仕事へ行く時より早起きして、街のコインランドリーへ一週間分の汚れ物、ゴミ袋2つ〜3つを車に積み込み、洗濯へ出かけて行ってくれた。大型洗濯機一回3ポンド。洗濯後、乾燥機に衣類を移し、20ペンスずつ、乾くまでお金を入れ続け10回もコインを入れた頃には、持って行った20ペンスコインも無くなり、大体乾いた・・・でも湿気ている洗濯物を、再びゴミ袋に入れ、ゴミ袋サンタと化してホテルへ帰って来ていた。

 だから、私が横型洗濯機を見、そして使ったのは1月も後半になってからの事だった。汚れ物をためる事無く洗濯出来るのが、新しい家に越して何よりも嬉しい事だったのを覚えている。そして、私以上に喜んだのは、言うまでも無く、毎週末早起きをしなくて良くなった主人。

 さて、引越してすぐ、まずは何か洗濯してみようと、始めて目にする横型洗濯機の前で、1から14までの数字の横にある字を眺め、1番90度と書いてあったが、(もちろん英語で・・・だから、判らないところは飛ばして読んでいた。)”まさか熱湯で洗濯する事もあるまい。”と、子供の洋服と下着少々で、洗濯を始めてみた。そうすると、洗濯機のあるキッチンが暖まるほど、もぁ〜と、洗濯機から暖かい風が・・・、本当に90度だったんだ・・・。でも、途中で止める方法も知らず、やめる訳にも行かず、ひたすら3番の60度になり、4番の40度になって、はやく洗濯が終わることを願った。どうも、息子の緑のカッターから色が出始めたようで、水・・・いやお湯の色が、黒ずんでいるのが、丸型ガラスのドアから見えるから余計ハラハラする。約2時間後、洗濯機から取り出された下着達は、しっかり黒く染まっていた。(初回から大失敗)

 そして、本来、4番の40度から洗濯するのだと言う事を学習し、普通の汚れ物なら4番から6番までで良い事を知ることになる。但し、4番から6番まででも1時間は洗濯機が回り続けるのである。さて、本題・・・何故横型洗濯機が日本で流行らなかったか、まず第一に一度洗濯機が回り始めると、横に付いてる洗濯機の丸型ドアは開ける事が出来ない。これは、きっと安全性の為ではないかと推測する。それは、どんな小さな子供でも手の届くキッチンの床に設置されているからだ。それに、一度水がたまってから、開けようものなら、床に水があふれ出るではないか・・・。

 とにかく、一度回り始めると、途中追加する事は出来ない。我が家のように、靴下を脱いではあちこちに置く主人の靴下は、この為度々洗濯されず、私からの愚痴を聞くことになるのであった。日本でなら”あー!!またこんなところに、靴下を脱いでぇー”と怒りながらも、洗濯機の蓋をパッと開け、途中からでも、ちゃんと洗濯出来るのに・・・。

 そして、極めつけ・・・どこか出かけたくて、急いでいる時、”洗濯機が止まった。速く干して出かけよう!!”と急いで、洗濯機のドアを開けようとするが、開かない。最初”壊れた!!”と思ったが、脱水後しばらくしないとドアが開かないことが判明。時間に追われてばかりの生活をしている日本人には、この数分の間が、とてもイライラする。洗濯に1時間もかかって、その間待っていたのに更に待つ・・・。

 イギリス人は、子供の時から何も無い公園などで、何もせず日長一日のんびりすることを教えられる。と何かの本で読んだが、数分の事でイライラするのは、バカバカしい気もするが・・・。やはり、私の肌には合わないようである。ちなみに、速く終えようと、3番の洗濯を短くしてみたり、4番の脱水を短くしてみたりしたが(力任せにダイヤルを、進めるだけ)4番の脱水だけは、進めるべきではない。何故なら、ちっとも脱水されておらず、再びスイッチを入れ直し脱水し、またドアが開くまでイライラしながら待たなくてはならないか、もしくは水が滴っている洗濯物を干さなくていはいけない事になるからだ。あまり、お勧めできない。それに日本では、キッチンに洗濯機を置くよう作られていないではないか・・・。流しと一体化させオシャレな感じを受ける、横型洗濯機。さて、貴方は日本の縦型洗濯機とどちらが良いと、考えられます?

 余談だが、ホテル住まいの間にクリスマスや正月を迎える事になり、コインランドリーが度々閉っていた、我が家は洗濯物をどうしたか・・・?私達夫婦は、切羽詰まった末、シャワールームでの、足踏み洗濯方を生み出すことになる。随分原始的方法だか、これのおかげで、ゴミ袋の山を減らすことに成功した私達。ただ、この方法の場合、脱水がしっかりできないので、かなり水が滴ることになる。私達の場合、幸いにもホテルの暖房が夕方から最強になり、Tシャツなどで過ごせるほど暑かった為、2日も部屋に干しておけば、全て乾いたのであった。


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