マツド・サイエンティスト研究所

研究報告15 本当に光速は超えられないのか?
〜 真夏の夜の夢 もしくは 秋の長き夜の幻 〜 the 7th of October 2002

the 13th of October 2002 メールを受け、更新

 今年の夏は暑かった。そして、今は秋。長い夜の季節である。
 暑苦しい夏の夜に、そして、秋の長い夜に見た夢とも幻ともつかない考えを記す。

夢の はじめ

 きっかけは、雑誌 インターフェース 2002 年 9 月号である。
 この号のインターフェースは、シミュレーションを特集にしており、菊地さんや牧野さんの書いた記事が特に読み応えがあり、必見である。 この特集では、シミュレーションについて、考え方や技巧的な解説があり、それを読んでいて、疑問と言うより改めて気が付いた事がある。
 記事中、「シミュレーションの精度を上げるためにシステムの総エネルギーを一定にする」旨の技巧的な解説がある。 これを読んで改めて、「力学的なシュミレーションによりエネルギー保存則が証明できるのではなく、エネルギー保存則が成立すると言う制約の元に力学シミュレーションが成立している」事だ。
 もとより、エネルギー保存則に反論を唱えるつもりは毛頭無い。 私が、ここで言いたい事は、あくまでも、「シミュレータにより法則が示されるわけではなく、法則があり、その上でシミュレータが構築されいる」と言う実態だ。

シミュレータの限界

 こう言ったシミュレータの限界は、潜在意識下で薄々気が付いていた。 だが、特集記事で意識表面化に表れた。
 ここまで読んで「何の事か良く判らん」と言う人が大半だろう。 そこで、今一度、整理しておく。
 質点の力学のシミュレータを例にして考えた場合、対象となる質点の運動は、 の2つの法則で計算できる。
 上記の法則に「エネルギーの保存則」が出て来ないと、心配なさる方もいらっしゃるかも知れない。 だが、安心して欲しい。 上記の 2 つの法則でエネルギーの保存則は演繹できるのである。
 この事実から、「引力の法則」と「運動量の保存則」を計算するシミュレータは、当然の帰着として「エネルギー保存則」を示す事ができる筈だと思われるだろう。 ところが、そうではないのだ。
 コンピュータ・シミュレーションが完全に正しい計算をするなら話は別だが、現実には次の事項から誤差が発生する。  これらの結果、力学シミュレータ中のエネルギーは変動し、エネルギーの保存則は成立しない。
 このようなエネルギー保存則の成立しない力学シミュレータは精度が悪い。 そこで、シミュレータ中の総エネルギー量が一定になるように修正しながら、シミュレーションを続けると精度が高くなる。
 このようなシミュレーションの計算精度を上げる技巧として、エネルギー保存則を積極的に取り入れる方法は、勿論間違いではない。 しかし、シミュレーションを用いて、「引力の法則」と「運動量の保存則」から「エネルギー保存則」を説明する事はできない。
 逆の言い方をすると、「力学シミュレータの中でエネルギーが保存されているとしたら、それはプログラミングした人間がエネルギーを保存させようとしたため」とさえ言えるのだ。

何故、揚力が発生するか?

 繰り返しになるが、上記の例は、エネルギー保存則の否定ではなく、シミュレーションを使った計算では、新しい概念を説明する事が難しいと言っているだけである。 上記のような質点だけで構成された系(システム)では、論理的に「引力の法則」と「運動量の保存則」から「エネルギー保存則」を演繹する事が可能だ。 だが、もっとシステムが複雑になると、容易に新しい概念を説明する事が困難になる。
 流体力学の世界では、「何故、揚力が発生するか?」が繰り返し何度も議論されている。 流体の力学的な記述はナディエ・ストークと言う方程式で示される。 これは、先の例の「引力の法則」と「運動量の保存則」に相当するもので、極めて厳密に流体の力学的な記述をしたものである。 このナビエ・ストークス方程式を使えば、空気中を進む翼に揚力が発生できるメカニズムを厳密に説明できる筈である。
 しかし、揚力の問題は、前述したように、長年に渡り、何度もモデルを変更したり、説明の方法を変えたりと、一向に落ち着かない問題なのである。
 このような意味において、流体シミュレーションは、実測した揚力と同等の力が発生するように工夫されてプログラムされたものに過ぎないと言える。 極論すると、「流体シミュレーションはナビエ・ストークス方程式を使って揚力等を計算するのではなく、シミュレーションを作った人間が『揚力と言う現象を知っている』から揚力を計算するようにプログラミングされている」のである。

人間の論理演繹の限界

 流体の揚力の例を考えると、「実際に揚力が発生している以上、ナビエ・ストークス方程式が悪いのでは??」、もしくは「揚力と言うのがナビエ・ストークス方程式で説明できないのなら、幻のような力ではないか??」とか考えがちである。
 しかし、「ナビエ・ストークス方程式は正しい」し、「揚力は実際に存在する力」である。 この場合、問題は「ナビエ・ストークス方程式」から「揚力」を演繹できない人間の論理的な限界にある。
 既述しているが、コンピュータ・シミュレーションには離散時間と扱える数値の有限精度と言う限界があるが、同様に人間にも論理的な演繹にも限界がある。 残念ながら、私自身が人間であるが故に、人間の論理的限界の厳密な理由付けを行う事は困難だが、傾向としては以下のものがある事を示す。補足 1  流体におけるナビエ・ストークス方程式は、「流体と言う状態数が無数にあり、連続的に変化するもの」の局所的に「力学的に記述した偏微分方程式」である。 上記の2条件共に成立する極めて人間の論理的な限界を誘発し易い問題なのである。

流体力学で超音速は予言できたか?

 揚力と言う現象は、流体力学自身よりも古い。 鳥もしくは翼竜や昆虫の祖先が、初めて飛翔を行った時から揚力は存在し、且つ有効に利用されており、どう考えても流体力学よりも古い存在である。 従って、厳然として存在する揚力を否定するよりも、それを説明できない体系を改めるように流体力学という学問が発展したと考えられる。
 ここで、夢や幻のように浮かんだ考えは、「それなら、超音速飛行が実現される以前、流体力学は超音速と言う新たなる概念を予測しうれたか?」と言う問題である。
 推測と言うより、憶測に近い考えとして、当時の流体力学の大勢は「超音速飛行など不可能」と理論付けていたのではないだろうか? 少なくとも、超音速飛行の「可能派」と「不可能派」が対立し議論していたのではないだろうか?
 その根拠は、流体の中で力等は、音速以上の速度で伝わらないからである。 もちろん、この根拠自体間違っているのだが、当時は、それが理由で超音速飛行自体を否定していた可能性がある。
 もちろん、現状ではナビエ・ストークス方程式を用いたシミュレーションで超音速飛行を説明するモデルを作る事は可能である。 しかし、それは、シミュレーションを作った人間が『超音速飛行が可能』と知っているから、「超音速飛行が可能な流体シミュレーション」をプログラムしたに過ぎない。 全ては後からのこじ付けなのだ。補足 2

 ここで、暑く寝苦しい夜を過ごす。そこで見たのは夢か幻か。

 仮に「事前に流体力学の主流は超音速飛行を予見できなかった」とするなら、そして、事後に見直すなら、ナビエ・ストークス方程式を何ら改める事無く、超音速飛行を説明できたなら、同じような事が、「相対性理論」と「超光速飛行」にも当てはまらないか? そう言う夢とも幻ともつかない考えが、再び浮かんだ。
 そう、相対性理論の中核をなす「アインシュタイン方程式」も「ナビエ・ストークス方程式」と同じく、連続した場を記述する偏微分方程式なのだから・・・

夢の 途中

 いよいよ、本編の本題である『本当に光速は超えられないのか?』を語るときが来た。補足 3
 読者の中の多くには、「超光速飛行」と聞いただけで訝しく思う人も多いだろう。 そう、超光速飛行は「疑似科学」や「トンデモ系」で語られる事はあっても、まともな物理理論で語られる事は、ほとんど無かったからだ補足 4。 SF の世界の中でさえ、最近では ハード SF で使われる事も少なくなった。 たまに SF で超光速飛行が扱われる事があっても、その原理は「異星人によってもたらされた謎」だったり、空間を曲げ亜空間を跳躍するワープだったりする。 亜空間の跳躍による超光速飛行など、流体力学による超音速飛行を諦め空気の無い宇宙空間で超音速に相当する速度で飛ぶのと同じで、より難しい問題に摩り替えて問題を先送りにしているとしか思えない。補足 5

「疑似科学」や「トンデモ系」ではない「超光速飛行」の考察

 ここでは、「疑似科学」や「トンデモ系」にならないように、ちゃんとした物理理論を元に、亜空間のような問題の先送りをせず、「超光速飛行」を検討してみようと思う。 ここで言う「ちゃんとした物理理論」とは、相対性理論、つまり「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」である。補足 6
 「それじゃ、従来の正統的な考察と何ら道具立てが変わらないじゃないか!? 道具立てが同じなら、同じ結論にしか達しないだろう。つまり、超光速なんてありえない。」と言われる読者も多いだろう。
 確かに、一般的に道具立てが変わらなければ、考察の結果も同じになると思われるだろう。 しかし、「超光速飛行など可能な筈は無い」と信じ切って解析するのと、そうでないのと結果が違ってくるかもしれない。
 潜在意識下で「超光速飛行など可能な筈は無い」と信じている場合、結局、「超光速飛行が不可能なのは、超光速飛行が不可能だからだ」と言うような同語反復(トートロジー)のように論理が堂々巡りになっている事も多いだろう。
 ここでは、一端「超光速飛行は可能かもしれない」と言う前提に立って、今一度、「超光速飛行」の可能性について検討してみたい。

「超光速飛行」が不可能と思われている理由

 まずは、一般的に「超光速飛行」が不可能と信じられている、その理由を明らかにして、妥当性を再検討しよう。
 「特殊相対性理論」において、例えば、光速の 90% で航行している宇宙船が、更に光速の 90% の加速をした場合、合計は足して、光速の 1.8倍になるわけではない。 外部から見た合計の速度は、光速の 99.44 %に過ぎない。補足 7
 このように、「特殊相対性理論の元では、物体は幾ら加速しても光速を超えることができない」と言う論理の展開が、「超光速飛行は不可能」と結論付けているのだ。
 しかし、ここで、今一度、前述の論理展開を見直してみよう。
 前述の論理展開の前提である「特殊相対性理論」とは、「質量の無い平坦な空間だけ」の場合に適用できる理論である。 従って、逆説的に言えば、「特殊相対性理論」の及ばない範囲であれば、「超光速飛行は不可能」とは言い切れないのである。補足 8
 ここで、注意してもらいたいのは、私が言いたいのは「特殊相対性理論そのものが間違っている」と言う気は毛頭無いことだ。 「特殊相対性理論」は実際の物理現象を扱う上で、極めて上手く現象を記述する事のできる有用な理論である。 しかし、重要なのは適用範囲である。 厳密には既述の通り「質量の無い平坦な空間だけ」の場合にのみ適用できる。 また、「質量の無い平坦な空間だけ」と近似できる範囲においては、ほぼ適用できると考えて良い。
 我々の周りで日常的に起きている物理現象の範囲では、厳密には質量が存在するのだが、その量は小さく、「質量の無い平坦な空間」に近似できる場合がほとんどである。 つまり、一般的な応用の範囲では、「特殊相対性理論」は、そのまま使う事ができると考えて、ほぼ問題は無い。

特殊相対性理論が応用できない範囲

 「特殊相対性理論が応用できない範囲」とは、どのような状況であろうか? それは、前述の「特殊相対性理論の適用範囲」の否定である。
 すなわち、
  1. 質量がある
  2. 空間が平坦でない(空間が歪んでいる)
である。
 上記の内、第一項と第二項は同じような事を言っている。 質量があると結果的に空間が歪む。 この歪みにより、特殊相対性理論が適用できなくなるからだ。
 逆に、空間が歪みのに、質量が必須なわけではない。 重力波は空間の歪みが伝播するものであり、こう言ったものなら、質量とは無関係に空間が歪むことは有り得るのだ。補足 9
 上記、三つの条件でも、その変移が十分に大きくないと特殊相対性理論が近似的に当てはまる。 従って、「特殊相対性理論が、近似的にすら応用できない範囲」とは次のようになる。
  1. 巨大な質量がある
  2. 空間が大きく歪んでいる

一般相対性理論

 「特殊相対性理論が応用できない範囲」の使えない場合に使用できる法則は、「一般相対性理論」である。 「一般相対性理論」の中核をなす方程式が「アインシュタイン方程式」であり、既述のように連続的な空間の歪みを既述した偏微分方程式である。 「人間の論理演繹の限界」の項目で述べたが、「連続的な空間の歪みを既述した偏微分方程式は、局所的には厳密な既述でも全体を演繹する事は難しい」のである。補足 10
 すなわち、「特殊相対性理論」のように簡単には「超光速飛行は不可能」と言い切れない。 だからと言って、逆説的に「超光速飛行は可能」とも言えるわけではない。
 一般相対性理論のように複雑な事象を伴う理論の場合、一般化した解釈を全般的に適用する事は不可能である。 具体的な例の一つ一つに対して、その事象の可能性を探るしか方法は無い。

何を持って「超光速飛行」と言うのか?

 そもそも「超光速飛行」とは何だろう? この共通概念を統一しておかないと、この後の議論で歯車が狂ってしまうので、「超光速飛行」の定義をしよう。補足 11
超光速飛行の悪い例 その1
 超光速飛行について、具体的な例を一つあげよう。 一般的に「浦島効果」として知られる「特殊相対性理論」のローレンツ変換の応用例である。
 例えば、9光年の距離を進むのに、宇宙船が光速の90%の速度で進めば、10年かかる。 しかし、宇宙船の内部では時間が進むのが遅くなる。 具体的には外部で経過する 10年の時間が 4.4 年になる。
 つまり、4.4年で9光年進むのだから、光速の約2倍の速度で進んでいるのに相当する。 これは立派な「超光速飛行」ではないか!?
 もちろん、この理論展開は間違っている。 上記の例では、距離を測る視点(宇宙船外部で静止)と時間を測る視点(宇宙船内部で運動中)が異なっている。 いくら、相対性定理が働くと言っても、距離と時間の規準となる視点を別々に規定するのは無茶苦茶である。
 つまり、この間違った例から得られる事は、「超光速飛行とは、運動する物体(宇宙船)の外部の視点から測った距離及び時間で計算した速度が光速を超えていなければならない」事である。
超光速飛行の悪い例 その2
 先の例から、距離及び時間を測定する視点は宇宙船の外部に置かなければならない事が判った。
 そこで、図1のように、大質量が生む重力井戸の深いところに、視点を置けばどうなるだろうか? 重力井戸の底では、外部に比べて時間が遅く流れる。 例えば、重力井戸の底での1年の時間が、外部では10年とか20年、極端な例では、1万年と言うような時間に相当する事も有り得るのだ。補足 12
 例えば、重力井戸の底での1年が外部での10年に相当する場合、外部で光速の90%で9光年を進む時間(10年)が、1年と感じられる。 一年で9光年なら、光速の9倍の速度だ。
 これまた、おかしな話である。 極端な話、重力井戸の底の一年が外部の一万年に相当するような場合、相当遅い速度でも光速を超える事になる。
 二つ目の間違った例から判る事は、「外部の視点は、質量などから十分離れ、平坦な空間上にある」事である。
超光速飛行の定義
 これら二つの悪い例から、次のように超光速飛行を定義する事ができる。
「超光速飛行とは、運動する物体(宇宙船)の外部の質量などから十分離れ平坦な空間上にある視点から測った距離及び時間で計算した速度が光速を超えていなければならない」

超光速飛行への挑戦

 今までの考察から、既に超光速の可能性を考える糸口が見えてきている。 まず、「近似的であっても特殊相対性理論の応用できる状態では、超光速飛行は不可能」であるので、「巨大な質量」「空間が大きく歪む」のいずれか一つ以上を満足し、「特殊相対性理論では扱えない」状態にする必要がある。
 当然、上記のような「特殊相対性理論では扱えない」状態では、「一般相対性理論」が有効だ。 しかし、「一般相対性理論」には単純で普遍的な一般解は存在せず、無数に解が存在する。 従って、望むような「状態」が、「一般相対性理論」に合致するかは一つ一つ確かめて見るしかないのだ。
 逆に言うと、「超光速飛行が可能なような都合の良い状態」のアイデアを数多く考え、その一つでも「一般相対性理論」に合致し、存在の可能性が認められれば、「超光速飛行」を発見したも同然なわけである。 ある種、「パズル」にも似ている。

超光速飛行が可能なような都合の良い状態

 それでは、「超光速飛行が可能なような都合の良い状態」とは、どんなものだろう? 余り良い例とはいえないが、私が考えた物を紹介しよう。
 図2に、空間が歪んで山を作って居る状態を示す。 この図は、図1と逆に回りの平面よりも高い部分が存在する。
 図1の時には説明しなかったが、これらの図で、高さ方向は時の流れる速度を表し、縦横の方向は、三次元空間の内の二次元分の写像である。 図中の平面は「質量などから十分離れた平坦な空間」だ。 この平面よりも高いところでは時間はより早く進み、低いところでは遅く流れる。
 図のような山の頂上では、時間が早く進む。 そして、その場所での速度は、局所的な「特殊相対性理論」に拘束されるので、局所的に光速以下に制限される。補足 13
 しかし、局所的な時間自体が早く流れるので、外部の視点からの大局的な観察では、速度は光速を超えるのである。

 一応、図2の状態でも超光速飛行とは言えるのだが、余りにも範囲が狭いので、もう少し広範囲に使えるような状態を図3に示す。
 図3は、MPEG 動画にリンクしているので、クリック等で見て欲しい。補足 14
 図3では、上半分は時間成分も含めた歪んだ空間を示し、下半分は歪んだ空間の平坦な三次元空間への写像である。
 この場合は、山は移動している。 この例では空間的な山と言うより、重力波の単独波(ソリトン)と言った方が良いだろう。 図3の単独重力波は、空間を光速で移動する。 その頂点付近にある宇宙船(赤い点)は局所的には、光速よりも遅い速度で進んでいる。 しかし、単独重力波の頂点付近では、周りの平坦な空間よりも時間が早く進むために、外部から観測した結果、宇宙船は単独重力波の速度、つまり光速よりも速く進む事ができるのだ。 ちなみに、図3の青い点は、平坦な空間を光速で移動している。 赤い点と青い点の速度を比べれば、宇宙船(赤い点)が光速よりも速いことが判るだろう。

解けないパズル

 前節の図2 および 図3 のような状態ができれば、超光速飛行が可能な事は判った。補足 15
 しかし、そんな状態が、概念的には有り得るとしても、実際に存在しえるかどうかは別である。 山のような形状の空間の歪みを生むために、どうすれば良いか見当もつかない。補足 16
 特に 図3 の単独重力波(ソリトン)は、仮に作り出すことができたとしても、空間が一次元でも無い限り、四散し、一瞬にして消滅してしまうだろう。 存続し続ける単独重力波を形成するためには、もっと複雑な空間の歪みや単独重力波を発生し続ける仕組みが必要なのだと思う。

パズルを解く

 既述のように、「一般相対性理論」の元では、取り得る空間の形状は無数にある。 無数の中から、「超光速飛行」に都合の良い解を選び出さなければならない。 そして、選び出した空間の形状・状態および発生のメカニズムが、「超光速飛行に都合がよく」かつ「形成生成が可能」で「必要とされる時間、継続する事」を検証する必要がある。
 検証の方法として、「アインシュタイン方程式から解析解を求める方法」と「アインシュタイン方程式を計算するコンピュータ・シミュレーターで検証する方法」の2つが考えられる。
 2つの方法の内、前者の解析解を求める方法は、難しいのではないかと私は考えている。 アインシュタイン方程式の解析解(厳密解)としては、シバルツシルト解やカー解が有名だが、これらは極めて限定された制約の中での解である。 そう簡単に解が得られないほど、アインシュタイン方程式の解は求めにくい。 その中で、超光速飛行に都合の良い厳密解が簡単に得られるとは思えないのだ。補足 17
 もう一つの検証方法であるコンピュータ・シミュレーションについては、私自身のホームページの時間と空間のシミュレーションに、その糸口が示してある。 既に4年も前に書いたコンテンツなので、私自身、詳細は忘れてしまったが、アインシュタイン方程式を展開し、コンピュータ・シミュレーションを作る準備を行っている。 まだ、準備段階で止まったままになっているが、この試みを進めれば、コンピュータ・シミュレーションを構築できると思う。補足 18
 最後に、「超光速飛行を可能にする空間形状」を形成し、持続するシステムについて、工学的に実現する方法を考える必要がある。 どんなに理論的に可能なことでも、技術的に実現できなければ意味が無い。 例えば、「超光速飛行を可能にするには、銀河系一億個に相当するブラックホールが必要」では話にならない補足 19。 何とか現実的な技術の進歩で実現する可能性を模索する必要がある。

 今一度、「超光速飛行の方法を見つける」と言うパズルの解き方を整理してみよう。
  1. 「超光速飛行」を可能とする空間の歪みの形状を作る
    この時、特殊相対性理論が適用できないようにする事が必要
  2. アインシュタイン方程式の解析解やコンピュータ・シミュレーターを使って検証。 この時、 に付いても検証が必要だ
  3. 最後に「超光速飛行を可能にする空間形状」を生み出し、持続させ、更にその中で光速に近い速度で移動する工学的なシステムの実現性を検討する

超光速飛行の矛盾

 ここまでは、超光速飛行に対して、やや肯定的な意見を書いてきた。 しかし、厳密に考えるなら、仮に超光速飛行が可能な場合に発生する矛盾に対して、直視しなければならない。 その矛盾とは具体的には、「タイムトラベル」と「フェルミのパラドックス」だ。
超光速飛行はタイムトラベルを生む
 特殊相対性理論によると、少しでも光速を超える飛行が可能であれば、それは観測する座標を変える事により、「タイムトラベル」と等価になる。 ここで言う「観測する座標を変える」とは、観測者が高速で移動する事によるローレンツ変換を意味する。
 前項のような方法の「超光速飛行」が、仮に可能だとしても、光速を僅かに超える事しかできないと思われるかもしれない。 しかし、僅かでも光速を超える事ができるのなら、それは、どんな速い超光速飛行でも可能な事を意味する。
 例えば、光速の 1.1 倍の速度で飛行する宇宙船が有ったとする。 この船を、同じ方向に光速の 0.9 倍の速度で飛行する宇宙船から観測すると、相対的には光速の20倍の速度で飛行しているように見える。補足 20
 さらに観測者の宇宙船の速度を上げて、光速の 91% を超えると、先の超光速宇宙船は時間を逆向し始める。
 時間の逆向、つまりタイムトラベルが可能となると、『因果律』も成立しなくなってしまう。 はたして、『因果律』の成立しない世界が有り得るのだろうか??
フェルミのパラドックス
 また、仮に超光速飛行が可能なら、有名な『フェルミのパラドックス』にも直面する。
 宇宙の何処かで発生した知的生命が、恒星間を超えて移民し、その生存の場を拡大する技術を得る事ができたなら、意外と短い期間で、宇宙中が、その知的生命の子孫で溢れてしまうと言う推論がある。 この「意外と短い期間」は、「恒星間を超えて移民」するのに依存するのだが、「恒星間を超えて移民」に非常に長い時間がかかるか「恒星間を超えて移民」自体が不可能ではない限り、宇宙自体が生まれてから、数十億年と長い年月が経っているため、宇宙中に知的生命体が溢れていて当然だと言う結論に帰着する。 しかし、実際には、我々地球人の観測できる範囲では、地球外の知的生命の存在の形跡は無い。 これが『フェルミのパラドックス』である。

 前述のように現状、地球外の知的生命の存在が確認できない以上、
  1. 地球以外に知的生命は発生していない
  2. 地球以外に知的生命は発生しても、何らかの理由で「恒星間を超えて移民」しない
  3. 「恒星間を超えて移民」に極めて長い時間がかかるか、移民自体不可能
  4. 実は、宇宙中、知的生命体だらけだが、地球人から隠れている
のいずれかの原因によるものである。
 上記の理由の内、従来は、「超光速飛行が不可能だから、恒星間を超えて移民に極めて時間がかかるか、もしくは不可能」と言うものが有力だった。 しかし、仮に「超光速飛行が可能」であるとしたら、上記の 3 以外の理由によるものだと考えざるを得ない。 だが、 3 以外の根拠は極めて薄弱だと言わざるを得ないのである。
矛盾は矛盾
 「タイムトラベル」や「フェルミのパラドックス」のいずれも、間接的な「超光速飛行への反証」である。 従って、推論自体が間違っている可能性もある。 例えば、私自身の推論として、「超光速が可能であれば、タイムトラベルが可能」と言う論理の中で、「特殊相対性理論による座標変換」を使っているが、元々、「特殊相対性理論が扱えないような空間場における超光速飛行」を考えているのに、「特殊相対性理論」で座標変換している事自体、自己矛盾に陥っている可能性があるのだ。
 間接的な反証の場合、推論自体に間違いがある可能性が残っているとは言え、『矛盾』を無視する事はできない。
 先のような矛盾を論理的に解決する事無しに「超光速飛行」の理性的な解決は有りえないだろう。

夢の 終わり

 結局、私は「超光速飛行」について、実現を確信するような証拠は何も示す事はできていない。
 このコンテンツで示した事は、 に過ぎない。
 果たして、「超光速飛行」の可能性を見つける事はできるのだろうか?

宇宙への夢

 私は宇宙を目指している。
 それは小学生時代に決意し、今も続いている。
 だが、宇宙を目指す人達に閉塞感が広がっている。
 それは、日本だけではなく世界的な閉塞感だ。
 それは、宇宙開発の専門家達だけでなく、一般の人々も感じている閉塞感だ。
 科学技術といった現実の世界だけでなく、SF 小説やテレビアニメや漫画の世界でも宇宙を扱わなくなっている。補足 21

 私は、宇宙を目指す人達に広がる閉塞感の原因は、次の三つの障害に集約されると思う。
  1. 地球引力の障害
  2. 太陽系内惑星に目的地が無い
  3. 光速の壁
地球引力の障害
 一つ目の「地球引力の障害」は、極めて単純で、宇宙飛行が実現して 40年以上過ぎているのに、相変わらず打上げは高コストで、普及しない事である。 勿論、その原因は、地球から軌道上への打上げが技術的に大変な事が理由だ。
太陽系内惑星に目的地が無い
 二つ目の「太陽系内惑星に目的地が無い」については、説明が必要だろう。
 30年程前まで、「宇宙にさえ出ることができれば、月や金星、火星、木星など行き先は幾らでもある」と思われてきた。 もちろん、そう言った月や惑星が、ここ30年の内に消えてしまったわけではない。 それらの惑星に、誰もが「行きたい」と思えるような魅力が無い事が判ってきたのだ。
 無人探査機などの調査により、そう言った惑星が、30年以上前に想像していたような「楽園」ではない事が判ってきた。 これらの太陽系の惑星の実態は「楽園」よりも「地獄」に近い。 呼吸できるような空気は無く、灼熱の砂漠か極寒の地獄のようだ。 今のところ、太陽系内に地球以外の生命が発見された確固たる証拠も無く、今後も発見されても単細胞のバクテリアか菌類くらいが関の山だろう。 生命だけではく、鉱物資源も有用な物が見つかっていない。
 また、現在は生命の住めるような場所が地球の他に無いなら、軌道上にコロニーを造るでも惑星改造(テラフォーミング)でも方法は残っていないわけではない。 しかし、軌道上コロニーに移り住みたいと好んで願う人は少数派だろうし、テラフォーミングには、少なく見積もっても数万年から数十万年の時間が必要だ。 どちらにしても直ぐに行ける場所ではない。
 仮に低コストで宇宙に出ることができても、行きたい場所が太陽系内に無いのだ。補足 22

光速の壁
 最後の「光速の壁」は、本コンテンツで話題にしている問題だ。
 太陽系内部に行きたい場所が無いと言っても、恒星間に出ることができれば話は別だ。銀河系だけでも1千億以上の恒星があると言う。 日本の人口の千倍も恒星がある。 一つの恒星が、地球のように生態系を作り知的生命体を生む惑星を持つ確率が、宝くじの1等に当たる確率並みでも、銀河系には、数千以上の知的生命の住む惑星があることになる。
 地球外生命にとっての楽園が、地球人にとっての天国とは限らないが、地球外生命の存在自体が、少なくとも科学調査の対象としても、観光としても行ってみたいと言う欲求を生むには十分な理由である。
 しかし、行きたいと思っても行けない。 例えば、銀河系に千個の地球外生命を持つ星があるとする。 銀河の大きさは約10万光年であるが、計算を単純化するため、全ての星が、10万光年の立方体に均等に分布するとすれば、1万光年間隔の立体格子毎に1個ずつ存在する事になる。 すなわち、1万光年の恒星間旅行を行わないと、地球外生命には会えないのだ。
 もちろん、上記の仮定は地球外生命を持つ星の確率に依存するため、各種の前提ごとに平均的な生命を持つ星同士の距離は変わる。 最近の観測では、恒星が安定した軌道で、地球型惑星を持つ事は意外と低い確率であることが判ってきており、他の生命を見つけるためには、最低でも数百光年以上の恒星間飛行が必要な事は間違いないだろう。
 そして、光速の壁がある。
 超光速飛行が不可能なら、数百光年の恒星間飛行には、最低でも数百年かかるのだ。 仮に光速に極めて近い飛行が可能で、浦島効果が使えて、宇宙船の船内時間では数年以内と短い時間で飛行が済んでも、外部では、やはり、それだけの時間がかかる。 どこかで、「地球外生命」を見つけて帰ってきても、地球には親も兄弟も家族も居ない。それどころか、文明すら滅びている可能性もある。
 そう言った危険を冒してまで、人類は恒星間飛行を行うのだろうか?
『地球引力の障害』『太陽系内惑星に目的地が無い』『光速の壁』の結び付くところ
 これらの三つの「障壁」は、理論的・技術的に全く異なるレベルにある。
 『地球引力の障害』は、理論的・技術的に不可能と言ったものではない。単純に低コスト化に手間取っているだけの事だ。補足 23
 『太陽系内惑星に目的地が無い』も、テラフォーミングに限れば、理論的矛盾は無い。技術的に達成が困難で、時間がかかる問題になる。
 『光速の壁』に至っては、理論的には全く確立していないし、技術的には論じる以前の問題だ。

 これほど、理論的・技術的レベルの違う問題が、宇宙を目指す人達に同じように閉塞感を与えているのだとしたら、それらを結び付けているところは理論や技術ではない。
 宇宙を目指す人達の『精神的な拠所』で、これらの三つの「障壁」が結びつくのだ。 『光速の壁』は遠い未来の事だし、『太陽系内惑星に目的地が無い』も相当な未来の事だ。 しかし、これらの未来が見えないと言う精神的な障壁が、目の前の『地球引力の障害』の単純なコストダウンに対する意欲の低下に繋がっているとさえ言えるのである。

夢の 続き

 私はパズルを示した。 それが解けると、『超光速飛行』を可能にするかも知れないパズルだ。
 私はパズルの考え方を示した。 漠然としてはいるが、パズルへの挑戦の仕方と検証の方法を示した。
 まだ、私はパズルを解いていない。 と言うより、解き始めてすらいない。

 なぜ、この時点、つまり、パズルの考え方を整理した段階で公開したかと言うと、私以外の人にも、パズルを解いて欲しいからだ。 もちろん、私も解き始める。 だが、大勢の人が挑戦すれば、私一人が挑戦するよりも早く解けるだろう。 もちろん、このパズルが解けるものであればの話だが・・

 このパズルは解ける保証も無い。
 パズルを解いても、賞金も何も無い。
 得られるのは、個人的な自己満足と、もしかしたら、ちょっとした名誉だけだろう。

 だが、人類は得る。
 誰かが、このパズルを解いた瞬間に、全銀河に広がる繁栄を約束された未来を、人類はその手に得るだろう。

注意

 今回のコンテンツは、極めて野心的である。 もしかしたら、「疑似科学的」とか「トンデモ系」と言う印象を受けるかもしれない。
 だが、筆者としては、「超光速飛行」と言うタブーに対して、今一度、純粋に科学的観点から、再検討したらどうかと提案しているに過ぎない。
 そう言った意味から、このコンテンツに対して、私の考慮不足や見当違いに対してのコメントをメール等で下さる事は大歓迎である。
 しかし、私は決して、「疑似科学的」やら「トンデモ系」に足を踏み入れるつもりは毛頭無い。だから、「疑似科学的」やら「トンデモ系」的な立場のメールは、ご勘弁願いたい。

メールを受け、更新 the 13th of October 2002

 野尻ボードの常連の ガさんからメールをいただいた。
 メールは、「以前、日経サイエンスの記事にあった『負のエネルギーがあれば超光速が可能』と同じじゃないか?」と言うものだ。
 慌てて、調べたところ、日経サイエンス 2000年 4月号 の『ワームホールと負のエネルギー』の事らしい。米国の著者の記事の翻訳物だが、訳者は福江純さんであった。
 この日経サイエンスの記事は、まったく知らなかったのだが、確かによく似ている。 仮に同じだとすると、記事の中の「時空の泡を使った超光速航行」が、私のアイデアに近い。記事の中の「時空の泡」が「単独重力波」にあたり、「負のエネルギー」が、私が「補足 16」で言った「負の質量」にあたるものだと思われる。
 ただ、決定的に違うのは、日経サイエンスの記事では「『時空の泡』を作るのに『負のエネルギー』が必要だ」と言っているのに対し、私は「重力波を工夫する事で『単独重力波』を作る出す」と言う点だ。多分、『時空の泡』では静的な時空の歪みを基盤に考えているのに対し、私はダイナミックな歪みを考慮しようとしている点によるものだと思われるが、日経サイエンスの記事からだけでは詳細は不明である。
 しかし、完全にオリジナルにして大胆なアイデアを思い付いたと思ったら、既に似たような事を考えていたなんて残念である。まあ、その一方、全くの荒唐無稽の見当違いをしているわけでも無い事が判ったのが不幸中の幸いだとしよう。
 ただ気になるのは、「長さ 200m の宇宙船を光速の10倍の速度で移動するための『時空の泡』を作るためには、現在観測可能な宇宙の全質量の100億倍に等しい『負のエネルギー』が必要」と言う点と「量子力学は避けて通れない」との事。
 やれやれ・・・ 学生時代に「量子力学は理解できない」って捨てた筈なんだが・・

補足

補足 1
 人間である私がコンピュータ・シミュレーションの限界を容易に示す事ができたのは、「コンピュータ」は「人間」の下位に当たるからである。だが、当然の事ながら、「人間」は「人間」と同位に当たるので、簡単に説明する事はできない。
補足 2
 しつこく繰り返すが、「超音速飛行の可能性は、実現以前には推定できなかった」と言うのは、私の憶測である。もし、この憶測が正しく「超音速飛行の可能派」が少数派だったりすると、この後の論理展開も現実味を帯びてくるのだが・・
補足 3
 何てこったい! ここまでは単なる前振りだったとは!? 何て長い前振りなんだ。
補足 4
 ここまで読んでくれた人の大半も、「野田も遂に超光速飛行などと血迷った事を考え出すとは、焼きが回ったものだな」と呆れているに違いない。
補足 5
 もっとも、史上初の大型人工物での超音速突破が、A4ロケット(V-2号)である事を考えると、こう言ったアプローチもあながち間違いとは言い切れないかも知れない。ちなみに小さい人工物まで含めると史上初の超音速突破は、ライフルか大砲の弾丸であろう。
補足 6
 何故、この考察では「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」に限っていて、もう一つの重要な物理理論である「量子力学」が抜けているかと言うと、私自身が量子力学を十分に理解していないことと、量子力学は局所的には超光速の移動や情報伝達を可能と示唆する部分があるからだ。
補足 7
 悪いが、何故こうなるかの説明は勘弁してくれ。正直、特殊相対性理論のローレンツ変換が理解できないようでは、この先の論理展開にはついては来れまい。
補足 8
 厳密に言えば、前述の「物体は幾ら加速しても」の部分を取ってみただけで、「物体と言う質量がある空間には特殊相対性理論は適用できない」と言う点で、「特殊相対性理論」そのものが使えない状況にある。
補足 9
 ただ、現状考えると、重力波は質量によってしか起こる方法が無いので、やはり、空間の歪みのそもそもの原因は質量であるとも言える。
補足 10
 アインシュタイン本人が一般相対性理論を発見した時に、この方程式の厳密解は永遠に解けないだろうと考えていた。だが、シバルツシルトが限定された範囲であっても厳密解を求めた。この辺はドラマチックな歴史の一頁なのだが、正確な話は別途参照されたい。
補足 11
 しかし、ここまで来て、やっと「超光速飛行」の定義か? 何て長いんだ。
 このコンテンツに関しては、内容の構成自体が持って回った書き方をしているからなあ。これと言うのも、「超光速飛行」と言うエキセントリックなテーマで、「疑似科学」や「トンデモ系」と誤解されるのを恐れているからだ。そもそも「超光速飛行」を考えるきっかけから説明したり、「流体力学と超音速飛行」のアナロジーを示す事で、真面目な考察をしている事を説明しようをしているのだが、判ってもらえるだろうか?
補足 12
 アニメビデオ「トップを狙え」参照。
補足 13
 この例では、特殊相対性理論が対応できないような状態を模索しているのに、「局所的に特殊相対性理論が拘束する」とはおかしいのではないかと思われた方も居るかも知れない。だが、大局的には特殊相対論が対処できないくても、ごく限られた局所的な部分では、ある程度の近似が行えるので特殊相対性理論が適用できる。
補足 14
 動画は比較的一般的な MPEG 圧縮方式を用いたが、ブラウザによっては上手く再生できないかも知れない。Quick Time 等で再生できない場合、いったん、ファイルをダウンロードして、「Windows Media Player」で見ると良いが、Mac の場合、どうしたら良いんだろう?
補足 15
 「図2 および 図3 のような状態ができれば、超光速飛行が可能」と言い切れるかどうか、実は自信が無い。平坦な空間から上に出た部分では、時間が早く進むのは事実だが、それに合わせて空間も縮み局所的な亜光速が大局的な超光速に成り得ないような制約があるのか、無いのか、まだ未検討なのだ。
補足 16
 負の質量を持つ物体でもあれば話は別なのだが・・
補足 17
 とは言っても、「超光速飛行に都合の良いアインシュタイン方程式の厳密解」が存在しない事を証明したわけではない。私の直感的な予測として難しいだろうと言っているだけだ。もしかしたら、超天才が「超光速飛行に都合の良いアインシュタイン方程式の厳密解」を求めてしまうかも知れない。
補足 18
 時間と空間のシミュレーションが準備段階で止まっている理由は以下の三点である。
  1. 境界条件(無限遠方を含む)が未考慮
  2. 何のシミュレーションをするのか明確な目標が無かった
  3. 他にやるべき事が多く時間が取れない
「時間と空間のシミュレーション」プロジェクトを再開するのには、上記の内、2番目はともかくとして、境界条件の考慮と、時間の確保が必要だなあ。(誰か、私に代わって、コンピュータ・シミュレーション毎作ってくれれば有り難いのだが・・)
補足 19
 仮に「超光速飛行が理論的には可能」となっても、こう言った実現方法しか無いような気がしてならない。
補足 20
 多くの人は「速度の方向が逆だろう!」と思ったかもしれない。しかし、超光速で飛行する宇宙船を追いかけると更に速い速度で逃げると言う常識とは反転した現象が起きる。
補足 21
 最近、NHK朝のテレビ小説「まんてん」や映画「明日があるさ」等、宇宙を取り扱う作品が復活している。異常状態だ。だが、これは、ある意味、宇宙開発に対する閉塞感の裏返しではないだろうか。特に映画「明日があるさ」や小説「夏のロケット」、漫画「なつのロケット」に代表される「一般人やNASDAを辞めた人が個人的にロケットを作るストーリー」は国策として行われている宇宙開発に対する一般国民の不満の表れだとも取れるのだ。
補足 22
 この「太陽系内惑星に目的地が無い」には異を唱える人が居る事は想像に難くない。「俺は火星に行きたいぞ」とか「ガニメデやエウロパだってあるだろう」と言った反論だ。しかし、こう言った「太陽系内の惑星や衛星に行きたい人」は皆無ではないが、少数派であることは認めざるを得ない事実だ。残念ながら「太陽系内には行きたいと思えるような場所が無い」と思っている人が大多数なのである。
補足 23
 理論的にも技術的にも不可能でない『地球引力の障害』は、差し迫った目前の問題であるだけに大きく見える。どうしても良い『地球引力』からの脱出方法が見つからないのだ。本当に「『反重力』でも有ったら」と願うのだが、良く考えれば、「反重力に頼る」事こそ、問題の先送りと言うか、すり替え以外の何物でも無いね。

Copyright (C) 2002 野田篤司
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