野田篤司の英国文化考

その4 コンセント 8th May 1998

21st May 1998 メールでの指摘を反映

英国のコンセントは不気味にデカイ

 日本では、一般的に、商用の交流電力を得る「差し込み部分」と壁に付いている「受け口」をまとめてコンセントと呼んでいるが、concent及びconsentは、辞書でひいても「同意」の意味しか無い。これらをコンセントと呼ぶのは一種の和製英語であろうか?英国では、「差し込み部分」は、プラグ(plug)で、「受け口」をソケット(socket)と呼ぶ。(日本だって、正式には、そう呼ぶんだよ)
 そんな訳で、題名には、判りやすい様に、「コンセント」と書かせてもらったが、これからは、「プラグ」と「ソケット」と書くことにする。

 左の写真は、英国と日本のプラグである。もちろん、白くて馬鹿でかいのが、英国のプラグ、黒くて小さいのが日本のプラグである。

 右の写真は、壁に付いているソケットである。これは私の家の台所にあるソケットで、二つ並んでいる。左側のソケットには、上の写真と同じようなプラグが付いているのが判る。
 写真を見ただけで、判ると思うが、英国のプラグとソケットは、馬鹿でかい、金具(電極)部分が異様に太くて角張っている、電極は3つである。見ても判らないのは電圧が240Vで50Hzの交流であると言う事だ。

 アメリカや英国以外のヨーロッパを旅行した事のある人なら判ると思うが、プラグ&ソケットの形状や電圧は国によってまちまちである。電圧の方は、英国の240Vは最も高いが、世界の多数派は220Vであり、むしろ日本の方が世界標準から大きく外れている。(昔、作った真空管のラジオ:5球スーパーのB電源は230Vだったなあ。多分、世界多数派の220Vと英国の240Vの中間で、日本以外ではトランスなんか使わずに直接電力を取っていたんだろうな。)
 しかし、プラグ&ソケットの形状の方は、他の国も多少の差こそあれ、ほとんどが日本と同じくらいの大きさである。(但し、電極が丸い場合が多い。)

 私も初めて英国のプラグ&ソケットを見た時、何と不格好で不気味かつ非合理的な大きさを持つ物だろうと思ったものだ。

不気味に大きいプラグ&ソケットは、合理的

 最初こそ、不気味と思ったプラグ&ソケットであるが、その大きさに慣れてくると、その合理性に気付いた。

 まず、この大きなプラグの中には、ほぼ例外無く、フューズが入っている。そのため、フューズが切れた時は、電気器具によって「何処にフューズがあるのだろう」と探し回るとこなく、プラグの中のフューズを交換すれば良いのだ。(最近の日本の電気製品にはフューズが入っている方が珍しいが) それにしても、最大13A=3,120Wとは、結構大きな電力だね。
 次にソケットの写真を見ると判ると思うが、スイッチが付いている。これを使えば、出かける時等に防火の為に、一々プラグを抜く必要はない。

 更に優れものが、プラグである。プラグの写真を良く見てもらいたい。3本の電極があるが、最も長いのはアースである。残りの2本に240Vの電圧がかかっているが、この2本の電極の根元が黒くなっているが判るだろうか。この黒い部分は絶縁体である。
 プラグがソケットに完全に刺さっておらず、少し抜けた状態の場合、プラグの横から、スプーンなどの伝導体を差し込んでも、電極が絶縁体で覆われているので感電する事はない。電極の伝導体が露出するほど、抜けかかっている時には、電極に電圧がかかっていないから、大丈夫である。日本の場合は、プラグの電極は根元まで伝導体のため、特に小さい子供の居る家庭では、このような感電事故の危険が付きまとう。

 そのうえ、ソケットには、さらなる感電防止策が施してある。ソケットの写真を今一度、良く見て欲しい。私の撮影が悪く、良く見えないかもしれないが、右側ソケットの3つの穴の内、上にある1つの穴だけが開いていて(穴が暗い)、下の2本は蓋が閉じている(やや明るい)のだ。開いている穴は、アース用の穴で、これにスプーンなどを突っ込んでも感電する事はない。ここにプラグの一番長いアース用の電極を差し込んで初めて下の2つの電圧のかかった穴に付いた蓋が開く。つまり、電圧のかかっている穴に悪戯して感電する事は、ほとんど無いのだ。その上、スイッチを切っておけば、二重に安全である。

 日本のプラグ&ソケットも、ちゃんと感電防止策を取ってもらいたいものだ。私の家庭の話ではないが、このような感電事故(大事には至らなかったが)が、ごく近所で起こった事がある。
 何か、日本のプラグ&ソケット用に安全対策を取れば、アイデア賞もので一儲けできるかなと思ったが、私の持って来たブラウンの電気髭剃り(秋葉原で買ったもの)に付いているプラグは、ちゃんと、感電防止用の絶縁カバーが付いている。(今まで、何の事か判らなかったが) おーい、日本製品も何とかしてくれ!!

世界で頑張る日本の電気製品

 とは言え、電気製品に関すれば、やはりメイドインジャパンは強い。英国の電気屋に入っても、松下やケンウッド、サンヨー等など(ここに書き切れなかった電器メーカーさんゴメンナサイ、皆あります)、日本のあらゆる電器メーカーの製品が置いてある。
 あれ? ソニーが無いぞ・・・と思ったら、置いてあるところが違った。一段高いガラスのショーケースの中に、ソニーの製品が鎮座しておりました。

 今、このホームページは、富士通のBIBLO(FMV-5100NC/S)というサブノートで書いているのだけれど、この電源、何と100Vから240VまですべてOKなんだよね。別に英国用ではなく、日本国内用として売っていたものなのに。他に私の持ってきた電気製品を調べたら、ソニーの8ミリビデオカメラとデジカメ(サイバーショット)が、やはり100Vから240VまですべてOK!
 貴方のパソコンも調べて見て! 今の製品は、結構100Vから240VまですべてOKになっているみたい。流石は世界に広がる日本の電気製品である。


メールでの指摘を頂いた!

 日本のH.K氏からメールで指摘:(この人は、2年程前に3ヶ月間の英国滞在経験がある)
 『プラグもどうもお国事情がありそうです。日本のように、配電盤とブレーカーがないと思いませんか?古い家にむりやり配線してるから無理があるのでヒューズとスイッチが手元にあるんじゃないかなー。プラグの根本の絶縁は、日本でも火災の原因になってたりしますけど、ほこりがいつの間にか溜まって、それがいつのまにか通電するようになって、ある日、火が出るという事故をなくすためだって言っていたような気がする。わりと最近こうなんたんだとか。で、フランスでも絶縁体はくっついていました。日本で買うプラグ変換コネクタは古いので付いていないようですけど。』

 なるほどね。でも、私の家(借家)には、配電盤もブレーカーもある。築十年と、英国では比較的新築だからかな?
 プラグ根元の絶縁も火災予防でしたか。でも、火災予防がメインの目的でも、感電防止にも役立っているんだから、両方兼ねているんだろうなあ。(と、相変わらず自分の推測=憶測を捨てない私。)


 このページに対する御意見、御感想が有れば、メールで送っていただければ大歓迎である。
Copyright (C) 1998 野田篤司